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写真立体

 写真とは現実世界を構成する四次元時空間に介在する対象を二次元平面化する行為であり、同様に動画とは四次元時空間を三次元時空間化する行為である。いずれも記録媒体固有の次元に拘束される形で自由時空間の表現主体を減次元化し、媒体に定着させる表現手法と言える。


 写真と動画は時間次元の取扱い手法によってのみ差異化されており、動画では一定間隔により時間次元を標本化し記録するが、写真においては表現者の意思により極めて高い自由度を持って時間次元の標本化を可能としている。特に写真における超時間露光は、動画においては二次元平面の連続体として表現される時間次元を一意の平面へと凝縮させる行為であり、写真固有の表現手段と言えるだろう。

 超時間露光によって時間次元は凝縮され消失し二次元平面化される過程において、表現主体を意図的な掃引によって仮想的な加次元化を試みる。すなわち撮影行為によって四次元時空間から二次元平面化される表現主体を三次元立体化させるのである。それは、さながら撮影行為によってのみ具現化する写真立体の造形と言える。

 確かに実在していた二次元の発光体は撮影時に掃引を印可する行為によって写真立体へと昇華し、今、目前に写真としてその姿を湛えている。「それはかつてそこにあった」筈だが、しかし同時に「それはそこにはなかった」とも言えるのだ。それら加次元化された写真立体を眺めていると、写真に於ける実在性と記録性とは何かを深く訴えかけてくる気がしてならないのだ。

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